美濃焼の魅力を徹底解説!歴史と特徴|マグカップなど人気アイテムも紹介
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日本の陶磁器生産額の1位である岐阜県の美濃焼。美濃焼は種類が多く、その特徴や違いは、何となくしか分からないですよね?
この記事では、美濃焼の歴史や特徴、黄瀬戸、瀬戸黒、志野、織部を見分けるための基礎知識をご紹介します。
目次
美濃焼とは、岐阜県の東濃地方(岐阜県南東部の地域)で作られている陶磁器の総称です。
主な生産地域は、多治見、土岐、可児、瑞浪、笠原など。
美濃焼の特徴は「種類が多いこと」です。
美濃焼の種類は多種多様で、伝統的工芸品* に登録されている様式は15種類にも及びます。
それは長い歴史の中で新しい技術や、釉薬の開発が進み、表現の幅が広くなったことの結果でもあり、先人達の努力の結果とも言えます。
*伝統的工芸品については、関連記事『伝統的工芸品一覧』を参照
美濃焼の起源は、平安時代まで遡ります。
平安時代(794 ~ 1180年)
朝鮮半島から伝わった須恵器(青灰色をした硬い土器)の技術をベースに、灰釉(草木の灰を溶媒とした釉薬)を施した、白瓷(しらし)の陶器(白色の陶器)が作られました。
鎌倉時代(1185 ~ 1333年)~ 室町時代(1336年 ~ 1573年)
日常的に使われる山茶碗や、古瀬戸、室町時代には大窯が築かれ、灰釉(薄い緑色/薄い青色)と鉄釉(茶色、焦げ茶色、黒色)が焼かれるようになります。
安土桃山時代(1573 ~ 1603年)~ 江戸初期(1603年~)
千利休や、古田織部による茶の湯の流行から、茶陶(茶の湯に使用する陶器)が多く作られるようになり、灰志野(灰釉に長石を加えたもの)、志野が作られました。
江戸時代(1603 ~ 1868年)
日常生活向けの食器が生産されるようになります。そして、江戸時代末期には、青磁や白磁が作られるようになりました。
明治時代(1868 ~ 1912年)~ 大正時代(1912 ~ 1926年)
明治時代に入ると、分業化により、低コストでの大量生産を実現します。
大正時代には電気のインフラが整うことで機械化が進み、生産規模が拡大しました。
現在では、美濃焼が日本の陶磁器生産において、全体の55%を占めるまでに至っています。
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日本には有田焼、美濃焼、瀬戸焼、九谷焼、信楽焼など多数の陶磁器があります。
さて、陶磁器(食器)の生産額を都道府県別で見たときに、一番大きい県はどこだと思いますか?…
美濃焼の様式には15種類もあるとはいえ、代表的な様式として、黄瀬戸、瀬戸黒、志野、織部の4種類が挙げられます。
黄瀬戸は、淡い黄色に発色した灰釉の陶器です。
植物の文様が描かれているのが特徴とされ、ぐいのみ手、あやめ手、菊皿手の3種類があります。
・ぐいのみ手
厚手で、光沢があるビードロ肌です。
・あやめ手(あぶら揚手)
薄作りで、半光沢で、あやめの線刻文を施し、焦げにより文様が付けられます。
・菊皿手
厚作りで、光沢が強く、日常雑器などが大量生産されています。
瀬戸黒は、安土桃山時代に焼かれた陶器で、漆黒の艶が特徴の美濃焼です。
この黒色は「引出黒」と呼ばれ、窯から引き出す際に急激に冷えることで現れます。また、桃山時代では茶碗だけが作られたといわれます。
・瀬戸黒
天正時代(1573〜1592):大窯で焼成された、切立形(きったちがた:腰から口縁までまっすぐに切り立った姿)の茶碗で、黒一色。
・織部黒
慶長時代(1596〜1615):大窯で焼成された、沓形(くつがた:形に計算された歪みがある)の茶碗で、黒一色。
・黒織部
登窯で焼かれた、沓形の茶碗で、釉薬が左右に塗り分けられ、余白に鉄絵をつけ長石釉(乳白色な透明感が出る)を施したもの。
志野は不透明な乳白色で、貫入(かんにゅう:窯から出して冷ます際に出来るヒビのような模様)が特徴的な美濃焼です。
16世紀末に大窯で生産され、日本初の白っぽい焼き物と言われています。
また、国産の茶陶では2つしかない国宝の内の1つが、志野焼の茶碗『銘卯花墻』です。
※もう一つの国宝は、本阿弥光悦作、白楽茶碗『不二山』
種類は技法によって分けられ、無地志野、絵志野、鼠志野、赤志野、紅志野、練込志野、灰志野などがあります。
・無地志野
白素地に志野釉(白色釉薬)を掛けた白無地が多く、絵の模様が少ない。
・絵志野
絵志野は日本で初めて、筆を使って文様が書かれた焼き物です。
・鼠志野
下地に鬼坂と呼ばれる鉄化粧がされ、それを掻き落として文様を付け、上に白釉を掛けたもの。
鉄が残る部分が鼠色になる為、「鼠志野」と呼ばれる。
・赤志野
鼠志野と同様の手法で作られるが、赤褐色に変化したもの。
・紅志野
白素地に赤ラク(黄土)で化粧し、その上に志野釉を施したもの。
・練込志野
白土と赤土を練り混ぜて成型し、その上に志野釉を施したもの。
・灰志野
灰釉に長石(ちょうせき)を加えたもの。
※まず灰志野が作られ、次に長石だけにした志野が作られました。
織部は深い緑色で、個性的な造形や文様が特徴の美濃焼です。
歪みすら魅力ととらえ、絵付けは市松模様や幾何学模様が用いられています。
名前の由来は、美濃出身の茶人の古田織部が好んで作らせたことから「織部」と呼ばれています。
織部は連房式登窯*で焼かれた美濃焼で、初めて量産を目指して作られた焼き物です。
織部の種類には、青織部、織部黒・黒織部、赤織部、志野織部などがあります。
・青織部
一部に銅緑釉を掛け、余白に鬼板(鉄分を多く含む褐鉄鉱)などで文様を加えたもの。
種類が多く大量に作られており、織部で最も有名なのが青織部です。
・織部黒・黒織部
沓形の茶碗が多く作られ、鉄釉を掛け、窯から出して冷ますことで光沢のある黒になります。
・黒織部:一部に釉薬を掛けずに、白釉をかけて鉄釉で絵を描いたもの。
・織部黒:全部が黒いもの。
・赤織部
赤土のみを素地として作られており、鉄絵で文様を描いたもの。
・志野織部
鬼板で文様や絵を描き、志野釉を施したもの。志野を登り窯で焼いたことが始まり。
*:連房式登窯:焼成室(房)を斜面に複数連ねた窯の総称。各部屋の熱を効率よく使える。
16世紀後半に唐津で導入され、美濃や全国に普及しました。
1. 土作り
まずは荒練をし、土を寝かせます。そうすることで粘土内のバクテリアが作用して、適度に粘りのある土ができます。次に土を小分けにして、練って空気を抜いていきます。
2. 成形
ろくろ成形の場合、回転台に土をのせ、遠心力を使って、手に水を付けながら成形します。
他には、ひも作り、玉つくり、たたら作り、手びねり、などがあります。
3. 削り・装飾
縁や高台(器の底の脚)を削ったり、取っ手を付けます。
4. 乾燥
陰干し、天日干しを行って、ゆっくり乾燥させます。
この際、急いで乾燥させると、ひび割れや形の歪みの原因になるので注意が必要です。
5. 素焼き
素焼きは、600度〜700度の低温で焼き、水分をさらに抜きます。
これにより吸水性と強度が増し、釉薬の付着が良くなります。
6. 下絵付
呉須や鉄、銅などの顔料で、絵や文様を描きます。
※下絵付けと上絵付け:釉薬の下に描く絵を下絵付け、釉薬の上に描く絵を上絵付けと言います。
7. 施釉(せゆう)
釉薬を器にかける工程です。釉薬は焼くとガラス質の膜になり、器に透明感を出したり、発色させたりすることができます。
8. 本焼
1,000度〜1,300度の高温で焼き、素地や釉薬に含まれる物質を変化させます。
窯の種類:登り窯、ガス窯、トンネル窯、電気窯などがあります。
9. 上絵付
鉄、銅、コバルトなどの金属を使った絵具で、絵付けをします。
10. 上絵焼成
約700〜900度の低温で上絵を焼付けます。
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